新型コロナウイルスは遺伝子型により中国など東アジアに多い型、欧米で多く見つかっている型など3タイプに分けられるという(Forester P, et al. PNAS 2020 DOi 10.1073/pnas.2004999117)。Foresterらは世界中の重症急性呼吸器症候群(SARS-Cov-2)160例 の新型コロナウイルスゲノム解析の系統ネットワークアプローチから、中心的な遺伝子型をA、B、Cと呼ばれる3区分に分類した。AタイプはZhouらが報告したコウモリから分離されたウイルスに最も似た群であり、東アジアのみでなく米国や豪州などでも認められ、Aタイプから分かれたBタイプは東アジアで最も一般的なタイプである。Bタイプに由来するCタイプはフランスやイタリア、スウェーデン、米国、ブラジルなど欧米が中心で、中国本土からは見つかっていないが、シンガポールや香港、台湾、韓国では見つかっているという。
ウイルスはヒトなどの細胞内で増殖しながら絶えず変異しており、タイプを追跡することによって、感染経路や流行の分析、ワクチンの開発につながると指摘しているが、厄介であり、一筋縄ではいかない大きな理由になっているのであろう。当初、感冒類似といわれていたのはA型だったのだろうか?欧米では蔓延することがあってもA型なら風邪程度だろうと甘くみていたが、実際には拡散したのはC型で、そのため欧米では致死率が高いのであろうか?そうなると海外帰国者はC型?などと考えたり心配は尽きないし、さながらウイルスジャーニーとなる。
人間の行動範囲が広まり、迅速化したことにより感染症の広がりは以前とは比較にならない新たな局面を迎えている。そして、この広がりを抑えるにはロックダウン(都市閉鎖)が最も確実かつ必須の方法であると報道されている。この都市閉鎖、城壁社会である欧州では比較的確実・容易であるが、日本は都市の作りが異なっている。やはり、日本式を導入しなくてはならないことも海外とは異なった都市閉鎖の状況にならざるをえないのだろう。そして日本式の都市閉鎖がまさに始まった。この都市閉鎖という苦難の必要性を説くための会見が各国で行われているが、ドイツのメルケル首相のスピーチが名演説であったと話題になっている。東ドイツで育ち、不自由の経験がある彼女の言葉はうそのない説得力のある言葉であったのであろう。文は人なり、言葉は人なりである。
普段、考えなかったことを考えるようになり、不安になり、知らなかった情報がたくさん舞い込んでくる。いまカミューの「ペスト」が大流行だそうである。テレワークで時間があることが一因であろうが、歴史から学ぶ、過去の叡智、心理模様をと考えるのは当然かもしれない。早速、購入して読んでみることにしよう。